ビリー・ホリディを聴いてみる

 このヴァーヴ盤のビリー・ホリディも良いけれど、僕の考える彼女のベスト・レコードは米コロンビアから出ていた『ザ・ゴールデン・イヤーズ・VOL・1』という三枚組である。この三枚・六面のレコードは本当によく聴いた。これくらい繰り返し聴いたジャズ・ヴォーカルのレコードはちょっと他にないと思う。ヴァーヴやコモドアやデッカのビリー・ホリディもそれぞれに素晴しいとは思うけれど、超一流のスウィング・バンドをバックに歌いまくった三〇年代、四〇年代のこのコロンビア盤のビリーは奇蹟的といってもいいくらいに瑞々しく、そして完璧である。危うく、そして動かしがたく、踊りだしたいほどハッピーで、そしてたまらなく哀しい。あっけにとられるくらいオフ・ガードで、しかも手を触れがたい。
 とくにレスター・ヤングの参加したトラックはー"When You're Smiling" "I Can't Get Started"ー珠玉のように美しい。

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『ザ・ゴールデン・イヤーズ・VOL・1』は無かったので、以下の"When You're Smiling"が収録されている4枚目を聴いてみた。

いいね。スローでレトロなんだけど。こういうのをいいと感じるのは僕が年をとったということかも。CDについてくる解説も力入ってていいね。これ読んだらビリー・ホリディとレスター・ヤングの共演聴きたくなるよね。こういう解説っていうのは学術的な記述よりも行間から偏愛がにじみ出ているぐらいがちょうどいい。村上春樹もどっかでいってたけど、やっぱり本であれ音楽であれ何でも解説なり批評するんだったら、(たとえ批判するんであっても)初心者が読んでみたい、聴いてみたいなどとにかく試してみたいと思わせてくれるといいよね。

(略)
中でも<君微笑めば>と<あなたが私を好きだなんて>の共に2つのテイクの素晴らしさは筆舌に尽くし難い。
(略)
<君微笑めば>ではまず冒頭のモートンのソロからして良い。
(略)
続くテディもリズミカルで楽しそうにスイングする彼の真価を発揮した見事なソロだが、それ以上にあとに続いて出るレスターの名演がなんといっても燦然と光っている。まさにこのレスターはレコードで聴ける30年代の、それ以上にレコード史上における屈指のテナー・ソロの1つである。それはテディのソロの最後の2小節をかいくぐり、飛び込むようにして、最初から乗りに乗ったフレーズを爆発させるのだ。

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