東野圭吾について語ってみる
新作が刊行されると気になってチェックしてしまう、あるいはチェックせずにその本をすぐにレジに持っていってしまう、そうさせてしまう作家がいる。
僕にとっては東野圭吾はそういう作家だ。他には村上春樹、村上龍があげられる。もし生きていれば藤原伊織もこのリストに加わる。
はじめて読んだ東野作品は「秘密」だ。かれこれ10年くらいまえだろうか。いうまでもなくこの作品は東野圭吾のヒット作でここからブレイクしたといっていいだろう。東野作品をあえてジャンル分けするならミステリーだがこの作品はミステリーではない。ラスト数行までは。
別に犯人がどうとかそういう作品では全然無いのだが、ラスト数行でなにが秘密だったのかがわかる。当時ミステリーの枠を広げたと絶賛されていたが確かにそうだと思う。
これ以来東野作品を結構読んだ。僕にとっては表のベストが「秘密」、「魔球」、「手紙」で裏のベストが「白夜行」、「幻夜」だ。表のベストが感動的であるのに大して裏のベストは感動的ではない。「白夜行」を「感心はするが感動はしない」と評した人がいたけどこれも納得。もちろんつまらない小説ではない。構成が精緻でストーリーテラーの本領をいかんなく発揮している。ただ感動するかというとちょっと違う。ちなみに文庫版「白夜行」の解説を馳星周が書いているのだがそこで、こんなすぐれたそれでいて俺とは違った(暴力が出てこない)ノワール小説を書きやがって、くそ高い酒をおごらせてやるというような羨望をかくさないコメントをしていたと思う。そう、ともかくうまいのだ。なんだろう、残酷なシーンを全く出さずに恐怖を演出したヒッチコック映画のようだと言えばいいのか。
近作に関しての僕の個人的な評価は下記の通り。まあハードルがあがっているのとややマンネリ感があるのでこうなってますが、基本的にはずれはないと思います。
作品名 | 出版年 | 評価 |
片想い | 2001年 | C |
トキオ | 2002年 | A |
ゲームの名は誘拐 | 2002年 | Aマイナス |
手紙 | 2003年 | Aプラス |
赤い指 | 2003年 | C |
幻夜 | 2004年 | A |
さまよう刃 | 2004年 | Aマイナス |
容疑者Xの献身 | 2005年 | Aマイナス |
殺人の門 | 2006年 | C |
使命と魂のリミット | 2006年 | B |
夜明けの街で | 2007年 | B |
流星の絆 | 2008年 | Aマイナス |
と思ったら今日新作出てるみたいですね。チェックしにいかないと(笑)。